TPM(Total Productive Maintenance)とは1971年に公益社団法人日本プラントメンテナンス協会(JIPM)が提唱したコンセプトであり、製造工場の施設や設備などについて、様々なロスが発生しないよう「ロス・ゼロ」を目指すために守るべき生産保全のルールや概念です。
言い換えれば、TPMは生産現場や製造現場で無駄(ロス)が発生しないよう、作業員や関係者が一致団結して取り組むべき指針となり、日本語としては「全員参加の生産保全」や「全員で取り組むメンテナンス」といった意味で理解されています。
TPMは生産現場や製造工程に携わる全ての人員が協力して生産保全に向けた取り組みを行うことを重視しており、ロス・ゼロ実現のアプローチの前提として様々なロスの原因や内容を制定しています。
TPMで定義されている「16大ロス」は、それぞれ設備の効率化を阻害する8大ロスと、人の効率化を阻害する5大ロス、そして原単位の効率化を阻害する3大ロスに細分化されている点が特徴です。
TPMの目的は、TPMで定義されている16大ロスに対して、それぞれ効果的なアプローチを行うことでロスの原因を解消、ロスを軽減させて、無駄の発生しない生産保全体制を構築していくことにあります。
生産現場で発生するロスには非効率的な作業や設備故障による不具合品や不良品の発生、また原材料の無駄づかいなど様々な原因が想定されており、どのようなロスへどのように対処していくべきか全員で考えながら取り組まなければなりません。
TPMの定義する16大ロスの内、設備の効率化を阻害するロスとして8つのロスが定義されています。
設備の効率化を阻害するロスとしては、例えば設備や機器の故障、段取りや調整ミス、部品交換の手間、さらに立ち上がりやチョコ停、速度以上といった様々な問題やロスが考えられます。
いずれの場合も、生産設備を稼働させる時間やコストに対して、100%の成果を得られない場合にその差をロスとして考える点が重要です。そのため設備の故障や不具合によって製造ラインが停止すれば再稼働までにかかる時間だけロスが発生し、またチョコ亭の改善や調整などに時間がかかれば、そのためにロスが発生するでしょう。
設備の効率化を阻害するロスを解消し、効率的で合理的な設備の運用や施設の利用を目指すためには、目的に対して適切な設備の導入や環境の整備を行うだけでなく、日常的なメンテナンスや設備保全作業によって常に設備の能力や稼働体制を維持していくことが重要です。
また実際に設備や機器を使用・操作する人間だけでなく、設備導入を検討したり、マニュアルを作成したりと、様々な人間がそれぞれTPMを意識して業務へ従事しなければなりません。
人の効率化を阻害するロスには作業員の操作ミスといったヒューマンエラーの他にも、人材マネジメントの不具合や管理体制の不備、また作業に対して必要な工数や人員編成などを見誤っていた場合に発生する問題など、様々な原因や理由が考えられます。
そもそも十分なスキルや経験のない人員では適切な作業を行えず、操作ミスや動作ミスが発生してしまいます。また個々の従業員は十分なスキルを備えていても、工数に対して必要な人員が編成されていなければ結果的に効果的な運用は叶えられません。
その他にもスケジュール管理や進捗管理、情報管理といったものは作業基盤を構築するため、総合的な人材マネジメント環境を整えることが大切です。
人の効率化を目指すためには、全社的な人材育成や社員教育、また管理者や経営者の側にも正しい理解と意識が求められます。
原単位の効率化を阻害するロスとしては、基本的に以下の3つが考えられます。
例えば金属板を材料として金型加工する場合、適切なシミュレーションにもとづいて加工が行わなければ廃棄される材料が増えてロスが増大するでしょう。そのため合理的なシステムと機器の導入によって歩留りについて適正化を進めることは、原単位の効率化を目指す上で不可欠です。
また作業機器のエネルギー効率や燃費は日進月歩で向上しており、省エネ性能に優れた機械を採用することで環境負荷を軽減してエネルギーロスを抑制することができます。
その他にも、目的に適合した金型や治具といった工具・周辺器具を採用することで、効率的な製造を実現してロスの低減につなげることができるでしょう。
TPMにもとづいて生産現場のロスを低減させるためには、大きく8つの考え方を柱として実際の取り組みを考えていくことが大切だと去れています。
ロスを防ぐためには個々人が意識を高めて取り組むことはもちろん、会社の基盤として管理体制を構築し、合理的な計画や効果的な設備導入・システム活用を進めることが重要です。
様々な技術やシステムが発展し、ユーザーからのニーズも多様化していく中で、それぞれの業界においても市場競争が激化しており、競合他社に対して自社の独自性や強みを追求しつつ、商品やサービスの品質も追求していくという経営努力が一層に重視されています。
その中で、生産現場全体で協力体制を構築するTPMは事業戦略の土台になります。
経営状況の悪化や社会情勢の変動など様々な要因によって、即時的なシステム改修や設備の刷新を行えない企業や生産現場も少なくありません。しかし長年使われている設備や部品は高経年化によって機能や品質も劣化するため、より意識的な保全活動が求められます。一方、システムの高度化も進んでおり、新技術や仕組みへの理解も必要です。
限られた地球の資源を大切にしてロスを減らし、環境負荷を軽減することで将来にわたって地球環境の魅力を引き継いでいけるようにと、持続可能型社会の達成に向けたサステナブルな取り組みへのニーズが国際的に高まっています。そのためロスを低減するTPMにもサステナビリティへの貢献が期待されます。
国内外の企業がそれぞれサステナブルな社会の重要性を認識し、SDGsといった持続可能型社会の実現に向けた開発目標にも取り組んでいく中、ロスの軽減や安定した生産体制の構築といったTPMの考え方は、グローバル企業においても重要性を増している点が重要です。
また各種マネジメントの国際規格や日本産業規格でもTPM構築は推奨されています。
生産現場におけるロスを見える化してTPM活動の効率的な促進や成果についての評価を適正化するため、「KPI:主要業績評価指標」や「KAI:主要活動指標」といった指標を設定して、適切に情報や結果を記録し分析することが肝要です。
また指標にもとづいてTPM活動の途中経過や成果を明確化し、その前後などで結果を比較することで、どれだけのロスの低減効果が叶えられたのか、どういった取り組みが効果的であったのかと多角的な検証もできます。
またより具体的なTPMの指標として「OEE」や「MTBF・MTTR」といった指標も重要です。
設備総合効率(OEE)は「Overall Equipment Efficiency」の日本語訳もしくはその頭文字を取った略称であり、基本的に自動化ラインを中心とした設備保全効率化に関する代表的なKPIです。OEEはJIPMによって提唱されたTPMの指標(KPI)であり、IATF16949やISO22400-2:2014といった規格にも記載されるなどTPMを導入していない場合でも世界的に活用されています。
特に現代ではDX化やFA化による自動化ニーズも高まっており、OEEの重要性が増しています。
MTBF(Mean Time Between Failures)やMTTR(Mean Time To Repair)は共に設備保全における代表的なKPIの1種であり、製造業において積極的に活用されている指標です。またJIS Z8141やIATF16949といった規格においても規定されていることがポイントです。
MTBFは故障から故障までの動作時間を平均化したものであり、平均故障間動作時間や平均故障間隔と故障されます。一方、MTTRは故障した設備の修復時間を平均化した数値であり、平均修復時間と呼ばれます。
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